はじまりの
ものがたり
なぜオーガニックコットンが
良いと考えるようになったのか
これは Grow Organic の
はじまりのものがたりです
農薬をとりまくさまざまな問題
飲食業界が徐々にオーガニックを意識しはじめた2000年代。ファッション業界でも環境にも優しい「オーガニックコットン」が良いと考えるようになりました。「糸」の仕入れ先を探す中で、現在のパートナーでもある伊藤忠商事との出会いもあり、2006年、当時流通していた日本のオーガニックコットン 100トンのうち1/3にもなる量を仕入れ、洋服にすることに成功しました。
しかし「オーガニックコットン」とはつまり「農薬を使わず育てたコットン」ですが、当時のわたしたちは「なぜ農薬が環境に悪いのか」とまでは「理解」しているとは言えず、改めてオーガニックコットンの魅力を自分たちの感覚で、言葉で、「伝える」ためにコットンの生産地でもある「中国」や「インド」への訪問を企みます。
しかし中国や世界最大の綿花産地と言われているインドのコットン農家を尋ねると、それぞれの土地で、さまざまな社会的な問題が絡み合っていることを知りました。
例えば中国のある産地ではオーガニック農法を実現している反面、そのコストを減らすために駆り出された労働者たちの人権が守られていないことが明らかになりました。一方で世界最大の綿花の産地・インドでは経済的な貧困のせいでオーガニック農法が実現できない農家がたくさんいることを知りました。理由はただひとつ。
「儲からないから」
しかし体にも環境にも負担の大きい農薬を使うことによって、効率よく収量をあげることができますが、その売り上げでようやく手に入るのは翌年の種や農薬だけで、経済的に潤うことはありません。
そこで、わたしたちは、世界最大の産地とは言え農家1人あたりの農地面積が小さいインドならば、支援を通じてさまざまな問題を改善することができるのではないかと考えるようになりました。そして、「プレオーガニックコットンプログラム」を立ち上げます。
キーパーソンたちとの出会い
「プレオーガニックコットン」とは有機認証されるために必要な3年の移行期間に育てられた綿花のこと。化学肥料と殺虫剤を使わないため2〜30%減少してしまう収穫量=売上を補うため、「移行期間綿」にプレミアムをつけて購入することで、移行を支援するというアイデアです。伊藤忠商事との共同事業が進みプレオーガニックコットンは製品化され、出荷量を伸ばしていきます。しかし支援とはいえ、上がってしまう原価と売価に対して、お客さんが「選びたい」と思える「ストーリー(付加価値)」や、現地にもたらされる「支援効果」をどのように伝えるか、工夫が必要となっていきました。
なかなか課題解決に至らない中、ある日インドのコットン農家のオーガニック移行を支援している「PEACE BY PEACE COTTON(以下、PBP)」の代表の葛西龍也さんと出会います。PBP の「寄付」の仕組みを使って現地 NPO と協業し、農家を支援をすることができれば、プレオーガニックコットンの課題だった「透過的に生産地の状況がわかるトレーサブルなプレオーガニックコットン」を実現できるのではないかと考えはじめます。PBP の葛西さんと、インドで長年、小規模の貧しい農家支援を行ってきた NPO「FFID」の代表のアルンさん、そして伊藤忠商事、アーバンリサーチの協力のもと生まれたのが、「Grow Organic」プロジェクトです。
アルンさんは PBP が支援する農家に対して技術研修やオーガニック認証の取得サポートを行い、またそれら農家の活動を日記で管理していたため、この寄付先から綿を購入できれば、透過的な生産者の情報や支援効果の提供が可能という結論に至りました。かつてアパレル業界では見えにくかった生産者の顔や生産地の状況。
それらをできるだけクリアにし、これまでと違った価値を与えることで、わたしたちは服だけではなく、さまざまな物語を伝えることができます。お客様に服を「買ってもらう」だけではなく、「知ってもらう」ことによって、みなさんの手でオーガニックの畑を育て、農家の方々を支援することができるのです。